犬にダサいって言われる系飼い主

あのさぁ

 

犬が俺をなめてんだよね。

 

いやなめてるって、顔をぺろぺろするとかじゃないよ?

そんなんじゃなくてさぁ

犬がさ

 

完全に俺を下に見てんだわ。

 

はぁ?

なめてんの?

 

元々さぁ

俺らは、固い信頼関係で結ばれた仲だったんだよね。

めちゃめちゃ仲良かったんよ。

でも犬がさぁ

成長するにつれて、知恵をつけてきてさぁ

 

完全に俺のこと見下してるんだわ

 

・・・・・・・・・

 

お前どうしたん?

 

お前あんなに可愛かったやん?

あんなに色んなとこに一緒に行ったやん?

俺が帰ってくれば尻尾ふって大喜びやったやん?

あの頃のお前はどこいったん?

 

俺はさぁ

別に、飼い主だぞ!って偉そうにしたいわけじゃなくてさ

対等でいたいんだよね。

でもお前は完全に自分が上だと思ってるからさぁ

これじゃ信頼関係なんて築けないと思うんだわ。

ちょっとさぁ

話し合わん?

ちょっとそこ座ってくれる?

俺「ちょっと話あるんだけど、いい?」

犬「・・・なに?」

俺「あのさぁ、なんかさ、俺に不満ある?」

犬「…別に…ないけど…」

俺「いや、あるよね?」

犬「別にないって!もーなんなん?」

俺「ほらー!すぐキレるじゃん!前そんなんじゃなかったじゃん!」

犬「だからそれは!別に不満とかないのに、なんか言ってくるから!」

俺「明らかに態度おかしいもん!前ならさ、ソファーに座ってれば飛び乗ってきたじゃん!?」

 

犬「・・・チッ」

 

俺「舌打ちしたよね!今舌打ちしたよね!?」

犬「・・・してないよ」

俺「しましたー!完全にしましたー!聞き間違いじゃありませーん!」

 

犬「・・・・・・」

 

犬「…サイから…」

 

俺「え?なんて?」

 

犬「ダサいから…」

 

俺「ダサい?」

 

犬「ご主人がダサいからっ!!」

 

俺「・・・・・」

犬「・・・・・」

 

俺「俺がダサいから嫌いってこと…?」

犬「そういう意味じゃないけど…」

 

俺「だって言ったじゃん!今ダサいって言ったじゃん!じゃあどういう意味!?どういう意味で言ったの!?ねぇねぇ!!」

 

犬「そういうのがクソダセェんだよ!!」

 

俺「・・・・・」

犬「ふー!ふー!」

 

俺「ハハッ…そっかそっか。わかったよ」

俺「ちょっと、ベランダで風に当たってくるわ…」

 

犬「あ…ご主人…」

シュボ

俺「ふ~・・・」

俺「ダサい…か。ハハハ、俺って最低だよな。飼い犬にダサいなんて言わせるなんてよ…」

俺「マジ、ダッセーよ。笑っちゃうよな」

 

ガラガラ

 

犬「・・・ご主人?」

俺「お~、どした?」

犬「いや、あの、なんかその…ごめん…」

 

俺「おいおいなんでお前が謝んだよ~」

俺「謝んなきゃいけないのは俺だろ?ごめんな、ダサい飼い主で…」

 

犬「ち、違う!そりゃちょっとはダサいと思うこともあったけど…」

犬「でも…でも…それでもオイラはご主人が大好きだよ!」

 

俺「ホ、ホンマでやんすか?」

 

犬「・・・・・」

 

犬 (語尾ダセェ・・・)

 

だったらさぁ

シュボ  フ~

俺「あのさぁ、俺が吉川晃司だったらいいんだよな?」

犬「・・・・?」

俺「いやだからさぁ、俺がもし吉川晃司だったらダサいって思わんしょ?」

犬「・・・・?いやいや意味がわからんよ」

俺「俺が俺であるがゆえ、ダサいんだよね?吉川晃司だったら口が裂けてもダサいって言えんしょ?」

犬「いやそれは、確かに吉川晃司はかっこいいけど、それとこれとは別問題っていうか…」

俺「結局さぁ、ダサい飼い主かダサくない飼い主かの線引きってさぁ」

 

俺「吉川晃司か否かだよね?」

 

犬「いやそれはちょっと違…」

 

俺「違くないっ!!」

 

犬(めっちゃキレるやん…)

 

俺「だからさぁ、ちょっと吉川晃司とぶつかって入れ替わってくるわ」

犬「はぁ?」

 

俺「いやだから、よく漫画とかで、ぶつかって入れ替わるやつあるやん?」

俺「あれよあれよ」

犬「いや、そんなん無…」

俺「無理じゃないっ!!」

 

犬(情緒不安定やん…)

 

俺「じゃあ、ちょっと吉川晃司のとこ行ってくるわ!」

犬「ああっ!ちょっとご主人~!」

吉川晃司のライブ会場に来たわけだが

ワー!ワー!ワー!ワー!

吉川晃司「みんなセンキュー!ビーマイベイベーでアイラビュー!」

コウジー! コウジー!

 

俺「よしよし、ちょうどライブ終わったぞ」

犬「ご主人、マジでやるん?」

俺「はぁ?当たり前だろ。元々はお前が言い出したことだろ?」

犬(いや別に吉川晃司の件は言ってねぇよ…)

 

俺「あ、来た来た!よっしゃ!いくぜ!」

犬「やめといた方が…ひぃぃ!クラウチングスタートの構え…」

 

ドドドッ

ドドドドッ

ドドドドドッ

 

吉川晃司「ビーマイベイベ?」

 

ドーーーンッ!!

 

俺「…お?おおおお?」

俺「い…い…い…」

 

俺「入れ替わってるぅーー!!」

 

犬(マジかよおい…)

 

俺「フハハハ!どーよぉ犬ぅ!?」

犬「ご主人、さっさと逃げましょうよ!」

俺「おお、そうだな!じゃあな!俺の元の体と吉川晃司!」

俺「ビーマイベイベーでよろしくぅ!フハハハ!」

 

吉川晃司「モニカー!」

 

犬「はぁ…はぁ…」

犬「ご主人、あんまり無茶しないでくださいよ…」

 

俺「ふふふ…どやねん?」

犬「どうって?」

俺「お前が求めてたダサくない飼い主やろがい?」

犬「いや、まぁ…う~ん?」

俺「なんやなんや?なんやねん!」

犬「う~ん、なんか違うっていうか…」

俺「ちょ!おま…話が違うじゃん!吉川晃司になったら見直すって言ったじゃん!」

 

犬(言ってねぇよ、そんなこと…)

 

犬「ん~、なんていうかなぁ…」

犬「じゃあ百歩譲ってよ?百歩譲って外見が吉川晃司だとしてもよ?」

犬「中身は変わんないじゃん?中身はご主人のままじゃん?」

犬「オイラはその…ご主人の中身が、なんていうか…嫌なんだよね…?」

 

俺「見て見てすげー!吉川晃司のスマホ、芸能人だらけだー!」

犬(だめだコイツ…)

 

俺「あのさぁ、俺だってわかってるよ」

俺「いくら外見が吉川晃司でも、中身はダサい俺のままってことくらいな」

犬「そう、そうなんよ」

俺「だからさぁ、中身を鍛えるためにさぁ」

 

俺「出会い系アプリに登録しようかなって」

 

犬「はぁ?」

 

犬「え?え?ちょっと待って、どういうこと?」

俺「いやだからさぁ、見た目、吉川晃司になったじゃん?そしたらモテるじゃん?」

俺「モテるに決まってんじゃん?だって俺は」

 

俺「吉川晃司なんだから」

 

犬「だから出会い系に登録すると?」

犬「吉川晃司になったことを最大限利用して?」

犬「モテようと?ただモテようと?」

犬「そういうことだよな?」

 

俺「そそそそんなつもりじゃないよ!」

犬「めちゃめちゃ動揺してるやん」

俺「してない!動揺してない!韻踏んでるだけだから!俺元ラッパーだから!」

犬「ご主人、そういうとこがダサいんだよ?」

 

俺「はぁ?はぁぁぁあ!?」

俺「おま!犬のくせになんなの!?」

俺「ただ俺は!吉川晃司になって!ちやほやされて!」

俺「それで自信つけて!それでお前が誇れるような!ダサくない飼い主に近付きたくて!ええ近付きたくて!」

俺「それが目的なんですわ!!出会い系はそのための踏み台だから!!」

 

犬「へ~、物は言いようだな」

 

俺「はぁぁぁぁああ!?」

俺「お前黙って聞いてりゃ好きなこと言いやがって!」

俺「もう許さねぇ!」

 

俺「グミだから!お前のご飯、明日からずっとグミにすっから!!」

 

犬「・・・・・・」

 

 

犬「ダ…ダセェ…」

 

 

犬「はぁ~、わかったよ。ご主人もういいよ」

犬「オイラも悪かったよ。ダサいなんて言ってごめんな…」

犬「なんかもうちょっとしっかりしてほしくてさ…」

犬「でもさ、オイラ思ったんだ。ダサくても、やっぱりオイラはいつものご主人がいいって」

犬「ダサくても不器用でも、愛情いっぱい注いでくれるご主人が好きだって」

犬「だからさ、これからも…よろしくな?ご主人様(照)」

 

 

俺「見て見て~、吉川晃司のツイッターで、う〇こってつぶやいちゃったwww」

 

 

犬「・・・・・・・」

 

 

 

そこはかとなくダセェ・・・

 

おしまい。

 

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