35歳の春、離婚した。4

あのさぁ

 

妻との出会い書いてくわ。

 

妻には愛する彼氏がいて、俺はいちバイト仲間に過ぎねぇ関係だったのよ。

 

一緒にいればいるほど好きになってったけど、どうしようもねぇ。

もどかしいけど、一緒にいれるだけで幸せ。

そんな日々が続いたよ。

 

そんな日々の中、転機が訪れた。

 

それは俺の地元でまぁまぁでかい花火大会。

 

その日、俺は仲がいいツレ数人で花火大会を訪れた。

適当に酒飲んで、たこ焼き食ってさ、バカ話しながら信号待ちしてたのよ。

 

青になって横断歩道を渡ってたらさ、向こうから渡ってくる奴が

 

「〇〇く~ん!」

 

って呼ぶんだよ。

 

「はぁ?誰だよ?」って目を凝らしたらさ

 

なんと妻だったのよ。

 

予想外の遭遇にテンパる俺。

 

しかも浴衣ときたもんだ。

かわいさ50%増しと噂のあの浴衣姿。

 

もう気分は未知との遭遇だよ。

 

「あ、え、あ、おおおう!〇〇ちゃん!」

 

明らかに挙動不審な俺。

 

警察24時に出てくる職質の達人だったら、間違いなく職務質問を受けるであろう怪しさだ。

 

だって仕方ねぇだろ。

好きな女が突然、目の前に現れたんだぞ?

 

その衝撃はストロングゼロのおよそ57倍。

 

そんなテンパる俺に、珍しく酔っぱらってた妻は

 

「〇〇くん、これからも仲良くしてね。あ、メアド教えてよ!」

 

 

・・・・・・・・。

 

 

・・・・・・・・。

 

 

・・・・・・・・。

 

 

僥倖!

なんたる僥倖・・・!

 

 

ああ・・・神様・・・!

 

ビビッて番号すら聞けねぇ日々を過ごしてた俺に…

なんと妻から連絡先を聞いてきたのだ!

 

え、新手の詐欺ですか?

壺とか売ろうとしてる?

 

無論、妻はまだ彼氏と付き合っていた。

 

妻からしたら、ただバイト先の仲が良い人だから聞いたんだろう。

酒も入ってハイテンションだったしな。

 

深い意味なんかねぇ。

 

ただのバイト仲間との連絡先交換。

その程度の認識だったはずだ。

 

しかしそれでも俺は良かった。

めちゃめちゃ嬉しかった。

 

念願の妻の連絡先が聞けるのだ。

 

俺からしたら、ロシアの国家機密並みに入手するのが難しい情報を簡単に手に入れられたのだ。

 

まぁ、LINEもねぇ時代よ。

 

俺はシャイニングなんとかっていう、渾身のだせぇメアドを妻に教えた。

そして妻のこれまたクソだせぇ、メモリーなんとかってメアドをゲットしたんだ。

 

こうして念願の妻のメアドを手に入れたわけよ。

 

男くせぇつまらねぇ花火大会がバラ色に変わったっけな。

 

酒よ・・・

ありがとう・・・

 

お前のおかげで妻の判断能力が著しく低下して、連絡先をゲットできたよ。

 

感謝の気持ちに今からビール2万ケース買いに行ってきます。

 

そこからの俺はまさに有頂天の日々。

もう気分は天下を取った秀吉状態。

ニジューだったらキューブ2万個持ってる状態で最終オーディション。

 

要するに無敵だった。

 

好きな人のアドレスが電話帳に入ってる。

たったこれだけなのに、なにもかもうまくいく気になってたっけ。

 

こわいものなんかありゃしねぇ。

 

彼氏がいるだぁ?

 

はぁ?

 

関係ねぇ!

 

そんなもん奪いとっちまえ!!

 

 

とはなるわけもなくだな。

 

連絡先を聞いたはいいが、連絡できねぇ。

当然、あっちからくるはずもねぇ。

 

当たり前だよ、妻には愛する彼氏がいるんだ。

ほかの男にうつつを抜かしてる場合じゃねぇっての。

 

バイト先の野郎が一体なにを連絡するってんだ?

 

今日はいいお天気ですねってか?

 

はぁ?

 

世田谷の貴婦人か、貴様は?

 

ジョンとかいうでっけぇ犬がいるタイプの庭で水撒きでもしてろよ。

 

それからは連絡先を知ってるのに連絡できねぇっていう、逆に地獄の日々の始まりだよ。

 

え、なんかの罰ゲームですかこれ?

 

そんなモンモンとした日々を過ごしてたらさ

 

「どうやら妻が彼氏とうまくいってないらしい」

 

って情報をキャッチしたのよ。

 

タレコミ屋はパートのおばちゃん。

俺を可愛がってくれてたおばちゃんだ。

 

結果的にこれが俺と妻の距離を、グッと縮めるキッカケになったんだぜ。

 

ありがとな、おばちゃん。

この恩は一生忘れねぇよ。名前忘れたけど。

 

んで、ここにきてついに俺にスポットライトが当たんのよ。

 

万年補欠の俺がついに主役を張れんのよ。

 

田中圭から卒業する時がきたのよ。

 

伝説の主役・福士蒼汰になれんのよ。

 

やってやる・・・

 

やってやるぜぇ!!

 

ってなところで続きはまた今度な。